煙突と薪ストーブの理論、最終回の今日は煙突からの放熱によるドラフトへの影響について、考えていきたいと思います。
前回、前々回のおさらいとこれまでの考察の流れは以下をご覧ください。
・第一回 : 煙突と薪ストーブの理論
・第二回 : 薪ストーブの煙突と温度について
第二回では、ドラフトの強さは「煙突内の平均温度」に影響を受ける、とお話ししました。
そして、放熱をするシングル煙突と、放熱の少ない断熱二重煙突では、ドラフトに違いが出るんではないかと、考察しました。
ということで、煙突プランニングと煙突効果の関係を理論式から考察したいと思います。
まずは、煙突からどのくらい放熱されるのか、計算してみましょう。
計算式はこちらを参考にしました。
放熱の計算式
「断熱された円筒からの放熱」という式ですね。
そのまま、数値を入れると計算してくれるので、とても便利でした。
基本となる設定条件は以下の通りです。
ちなみに、外気温は計算の便宜上、すべての煙突の外側の温度を5℃として計算しています。
また、その他に、
・1m毎に区切って放熱を計算
・断熱二重煙突は、セラミックウールを断熱材として想定
・断熱二重煙突は、ステンレスによるライナーやケーシングは無視
としています。
また、放熱による温度低下は、放熱の数値(ワット数)と空気の比熱・比重、ドラフトによる煙突内の通過速度(所要時間)を基に算出しています。
まずはプラン毎に温度低下の計算結果をご覧ください。
オール二重煙突の方は少し結果が良すぎる気もしますが、シングル煙突の方は概ねこんな感じかな、という印象です。
放射温度計などで煙突の表面温度を測ったことがある方は、感じが分かるかもしれませんね。
そして、以上の結果を基に煙突内部の平均温度を計算して、煙突効果の式へ各条件を入れて計算した結果が以下になります。
A : 煙突高さh=6m、シングル煙突4m、二重煙突2m
B : 煙突高さh=6m、オール二重煙突
C : 煙突高さh=4m、シングル煙突2m、二重煙突2m
D : 煙突高さh=4m、オール二重煙突
シングル煙突を4mも使っているプランAは、煙突高さ4mのプランDとほぼ変わらない結果となっていますね。
シングル煙突4mというのは少し極端な例ではありますが、シングル煙突を多用する仕様は望ましくない事が数字上からも分かります。
また、煙突内部の温度低下からわかるように、かなり排気温度が下がるので、煙突内へ煤が付きやすくなりますよね。
また、A→C、B→Dのように単純に高さを2m減らした時、ドラフトの変化は煙突の仕様によらず同じような変化が表れています。
これは、煙突の断熱性能とドラフトは大きな関係があることが見て取れます。
逆に煙突の高さが確保できない場合は、オール断熱二重煙突の仕様にすることで、ある程度ドラフトが確保できるともいえます。
ということで、三回にわたってお送りした薪ストーブと煙突の理論、いかがだったでしょうか?
煙突のプランニングは薪ストーブの性能を引き出す上で重要なポイントですが、その参考になれば幸いです。